ホワイトニング後の歯のトラブルと言えば、一番多いのは「歯が痛い・しみる」ですよね。
埼玉県ふじみ野市「たきの歯科」の院長・山本達也さんにホワイトニングをするとどうして痛くなってしまうのか、原因と対処法を教えてもらいました。
歯がしみる原因とは
――早速ですが、どうしてホワイトニング後に歯が痛くなるんでしょうか?
そもそも、ホワイトニングというのは歯についたタンパク質汚れを溶かして漂白する仕組みになっています。
汚れが溶けた後その部分には隙間ができるわけですが、そこから飲食物などがしみていくので一時的に知覚過敏のような痛みが出る…というメカニズムなんです。
――そうなんですね。特に根本がしみやすい気がするのですが…。
はい、それも気のせいではありません。
歯の表面はエナメル質という層で覆われていて、この部分に薬剤が入る分にはしみにくいのですが
- 加齢で歯茎が下がって歯の根本が露出している
- 歯ぎしりなどで歯の表面にヒビが入っている
といったことがあると薬剤が中の方までしみやすくなってしまうんですね。
ただ、日本人はエナメル質が特に薄い人種なので歯が健康でも割合しみてしまう方が多いかもしれません。
しみやすくなる要因は他にも…
――そうなると、薬剤濃度の高い海外のホワイトニング剤を使う人は痛みがキツいかもしれないですね。
そうですね、私も前に北欧のデンタルショーでもらったテープのホワイトニングを使ったことがありますが、やはり刺すような感じがあって薬剤が強かったですね。
国内製品より濃度が高かったり成分自体も過酸化水素という強力なものを使っているので即効性はある分トラブルも起こりやすいと思います。
――なるほど。他にも歯がしみる原因はあったりしますか?
やはり虫歯が残ってたり治療した歯の被せものが合ってなかったり、薬剤が歯の中に入り込むような隙間があると浸透して染みてしまいますね。
後は若い方は神経が太くて敏感なのでしみやすい傾向があります。年齢を重ねている方ほど染みないのですが、その分汚れも落ちにくいという欠点はあるので一概に良いというわけではないですが…。
ホワイトニング前の注意ポイント
――歯の状態は自分ではわかりにくいと思いますが、やはり事前に診てもらった方が良いでしょうか?
そうですね、ホワイトニングは歯がきれいな状態から始めた方が短時間でできて効果が高いんです。
なので、まず可能な限りクリーニングできれいにします。
その時に色味や虫歯など歯の状態もチェックして問題なければ施術に入っていく…という流れですね。
――歯磨きだけでは不十分ですか?
はい、クリーニングはどの歯医者さんでも気軽に対応してくれるかと思いますので効果を高めるためにもやっておくのがオススメですよ。
痛みが出たときの対処法
――もし、痛みが出てしまったらどうすれば良いでしょう?
痛みにも段階があって、下に行けば行くほど重症になります。
- 冷たいものが当たると染みる
- 冷たい空気が当たると染みる
- 何もしなくてもズキズキ痛む
①なら知覚過敏用の歯磨き粉を使うだけで十分でしょう。それでもしみるようなら2~3日ホワイトニングをお休みしてください。
②ならマウスピースでガードしたり、マウスピースの中に知覚過敏用の歯磨き粉を入れて歯をつけておくといった対策が有効です。
③のように何もしなくてもズキズキしてしまったり温かいものが染みる場合は中の神経が炎症を起こしているかもしれないので歯医者さんに相談した方が良いですね。
そのままやり続けると神経が死んでしまう可能性があるので、歯をコーティングしたり、頻度を落としたり、過敏になった神経を治療したり…といった対応が必要になると思います。
歯医者に行くか行かないかの目安
――①は知覚過敏用の歯磨き粉で良いんですか?
はい、とても有効だと思います。
知覚過敏用の歯磨き粉には細かい粒子が入っていて、その粒子が薬剤で溶かした穴を塞いでくれるのでホワイトニングに影響なく痛みを抑えることができるんです。
――なるほど。それにしても③は怖いですね…。冷たいものでキーンとする程度なら大丈夫ということでしょうか?
痛みがすごく個人差があるので、「日常生活に支障が出るか」を基準にするとわかりやすいかと思います。
例えば「食事するのが結構大変」「日常生活でスースーしてて耐えられない」「痛くて眠れない」「ずーっとズキズキ痛い」レベルのときには絶対に相談は必要ですね。
少し染みるくらいなら大げさにすることもありませんが、続けていく中でどんどん痛くなることも多いので知覚過敏用の歯磨き粉は使った方が良いと思いますよ。
痛みを予防するためには
――トラブルにならないために事前に何かできることはありますか?
先ほども紹介しましたが、やはりホワイトニング前後で知覚過敏用の歯磨き粉を使うのは大事だと思います。
もしそれ以上ということであれば、先に歯医者さんにコーティングしておいてもらうのも有効です。
ただ、そうするとコーティングした場所は漂白されにくくなってしまう可能性も高いのでそこは兼ね合いですね。
その他にもトラブルになる場合が…
――ありがとうございます。余談になりますが痛み以外に起こりがちなトラブルはありますか?
「思ったより白くならない」「思ったような白さにならない」といったことがありますね。
例えば治療後の歯の色に合わせたくてホワイトニングされる方がいるのですが、白と言っても青系の白か黄色系の白か人によって異なる部分があるので色を制御してピッタリ合わせるのは難しいです。
後はセラミックやプラスチックなど詰め物の色は白くならないので境界が気になることがあるかもしれません。
――プラスチックとセラミック両方使っていると色合わせが難しそうですね…。
歯科医院では先に説明してご納得いただいてから施術に入ることが多いですね。
後はホワイトニングが終わってからプラスチックの部分をホワイトニング後の色に合わせて治療し直すという選択肢もあります。
治療の履歴があると色合わせは難しくなるので、もしご自分のみでホワイトニングをされる場合は注意が必要かもしれませんね。
最後に…
最近は若い方の間で韓国でホワイトニングを受けたり海外の強い製品を取り寄せて使うのが流行っていますが、ホワイトニング後にトラブルが生じるケースも多く見受けられます。
これはそのまま放っておくと神経が死んでしまう可能性もありますので、他で治療した場合であってもぜひ遠慮なく最寄りの歯医者さんに駆け込んでもらうのが良いかなと思いますね。