管理栄養士が教える糖質制限の嘘・本当、そのメリットとデメリットとは

金子あきこ
written by
金子あきこ管理栄養士

糖質制限の効果と体重が落ちる理由

結論から言うと、糖質制限ダイエットを行って糖質を取らないようにすると体重はすぐに減ります

実際、私自身も過去に糖質制限を行っていた経験があり、中学の夏休み期間の40日間で5kg減ったなんてこともありましたね。

なぜ体重が落ちるのか

糖質の摂取を控えると、体はその代わりに肝臓や筋肉に蓄えられている糖質をエネルギーとして使います。

この糖は糖分子1個に対して水が3~4倍くっついているのです。筋肉が分解され水も一緒に流出するため、体重という数字的には少なくなるので痩せたと勘違いしやすいのです。

本来は体脂肪を落としたいのに、大切な筋肉を落としてしまえば、代謝が悪くなるなどということもあります。私の場合体重は減りましたが、お肌や髪の毛が乾燥、便秘になりちょと辛かったです。

糖質制限のメリットとデメリット

糖質制限ダイエットの嘘・本当、そのメリットとデメリットとは|管理栄養士 金子あきこ17

栄養の観点からのメリット・デメリットは以下の通りです。

糖質制限のメリット

肥満の方がドクターや管理栄養士のもと治療目的で減量するなどは問題ないです。

またどの糖質を制限するかにもよります。主食であるごはんやパン、麺類などはきちんと食べ、菓子類やジュースなどを控えることは身体にとってとても良いことです。

糖質制限のデメリット

糖質制限は日々の食事制限で痩せた状態を維持しているので、制限を辞めれば必ずその分だけリバウンドします。つまり一生続けなければ維持できないということですね。

さらに、リバウンドしたときは前よりも筋肉量が下がって脂肪が増えた状態から始まるので、次のダイエットが難しくなってしまう特徴があります。

これを続けていると筋肉量が落ちてどんどん太りやすい体になっていくのは大きなデメリットとして挙げられると思いますね。

極端な糖質制限は不調をきたしやすい

糖質制限ダイエットの嘘・本当、そのメリットとデメリットとは|管理栄養士 金子あきこ18

当たり前の話ですが、人間の体は常に栄養素を得て生きているものですから、何か栄養分に偏りや不足があると不調をきたします。食事の量を減らしすぎれば、体がそれに見合った分の熱量しか作ることが出来ず体温が低くなったり、代謝が悪くなることもあります。

実際に中学時代から糖質制限を何度も繰り返していた私は20歳になる頃にはもう糖質制限しても全然痩せない体になってしまっていましたし、「髪の毛やお肌が乾燥する」「便秘がひどく下剤を使わないとお通じがない」など常に体の不調に悩まされていました。

これが糖質制限のせいと気づいたのが20代だったからまだ良かったですが、40代以降になると新しく筋肉を付けていくのはかなり大変で難しくなります。

ストイックな糖質制限を続けることで筋肉量はどんどん減ってしまい、60~70代の高齢期に骨折しやすく寝たきりの原因にもなりかねません。人生100年時代。いつまでも元気で過ごすためには表面上の体重ばかりに気を取られて制限を行うのはいかがなものかな…というのが個人的な意見です。

○○制限ダイエットの落とし穴

ファスティングってダイエット効果はあるの?|管理栄養士 金子あきこ23

結局、糖質制限に限らず何かを制限する系のダイエットでは体の機能が向上する方向にはどうしても向いていきません。

なので、制限ダイエットで痩せても顔色が悪くなり一気に老け込んで「キレイになりたくて痩せたはずなのに老けて見られる」なんて本末転倒なことも…。

特に年齢を重ねてくる40代以降の方は、「健康的な細さを求めるのか病的な細さを求めるのか、どういうきれいになりたいですか?」という部分はチャレンジする前に考えた方が良いかもしれないですね。

何をやっても痩せない人は…

体重(体脂肪)は時間をかけて増えていったのに、痩せるときはすぐ痩せたいという人がやっぱり多いんですよね。

なので、手っ取り早くガツンと体重が減る糖質制限に走りやすくなるのかもしれませんが、急激な変化にはそれなりのデメリットがあって目標体重が達成できても体に不調をきたしがちです。

「どのダイエットを試しても痩せなくて~」とグルグルしてる女性は世に結構多いと思うんですけど、やはり痩せるというのはそんなに簡単にはいかないんです。

「一生続けられない食生活ってどうなの?」というところからも、個人的には○○制限というダイエットはあまりオススメではないですね。

管理栄養士オススメのダイエット法

糖質制限ダイエットの嘘・本当、そのメリットとデメリットとは|管理栄養士 金子あきこ16

やっぱり一生食べて生きていくわけなので、「あれ食べちゃいけない」「これ食べちゃいけない」ではなく炭水化物を土台に栄養のバランスを整え体の土台を築くほうがメンタル的にも安定しやすいです。

食べ物は体の栄養でもあるとともに心の栄養にもなるのです。

「食べない」「カロリーを抑える」というのは体にとって逆効果で、実際には制限せず食べながら痩せる方が効率が良いんです。

糖質を食べても太らないの?

カロリーのある栄養素はたんぱく質、脂質、糖質の3つあり必要な量はどれくらいかなどをまとめた「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(厚生労働省出典)[1]があります。これは日本人の健康と維持増進のためのものです。

そこで推奨されているのは炭水化物60%、タンパク質15%、脂質25%という割合で、運動量にもよりますがこのバランスを維持した上で女性の方は1日大体1,800~2,000kcalは摂取して良いとされています。

糖質制限推しの方は「2,000kcalも食べて太らないの!?」「食事の60%が炭水化物!?」と思う方もいるかも知れませんが、ごはん(米)などの主食を土台に食べることでカロリーの栄養バランスが整い、体温や代謝が上がり、太りにくい体になれるのです。

実際、私自身が食事の内容を見直して炭水化物をキチンと取るようにしたら20kg以上痩せたということもありますし、ダイエット指導のときにも「まずは食べても大丈夫」ということを教えて、それでキチンと結果も出ているので、炭水化物の量と栄養バランスはぜひ重視していただきたいです。

ただし、こんな糖質制限はあり

糖質制限も主食であるごはん(米)などは生きていくために必要なものですから減らすのはNGです。その代わり、お菓子やジュースの摂取で糖質の量がオーバーしがちな人がその部分を減らしたり抜いたりというのはOKです。

どちらかと言うと制限というよりかはバランスを整えるための食事内容の見直しということになります。

最後に…

糖質制限ダイエットの嘘・本当、そのメリットとデメリットとは|管理栄養士 金子あきこ19

確かに糖質制限ダイエットは短期間で簡単に体重を落とすことができますが、健康を維持しながら痩せ続けるのは実際かなり難しいです。

加えて、糖質制限はまだ世に出て歴が浅く現段階では効果や安全性についてのエビデンスが何とも言えない部分もあるので、個人的にはストイックな制限を安易に真似されるのは危ないかな…と思いますね。

そもそも、あえて糖質を制限しなくても食べながら痩せることが可能なので、私は「普通に食べて太らない体を作った方が良いじゃん」という意見です。

「これとこれとこれを食べなきゃダメ」より「これを制限するだけ」の方が楽なので○○制限に飛びつく人が多いと思うのですが、バランスよく食べる習慣も身につけてしまえば楽なものです。

このページをご覧の皆さまには、ぜひキチンとした食べ方で健康的に緩やかに体重を落としていって欲しいですね。

参考文献
  1. 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」