柔軟で全身がペタッと床に着くのは体の硬い人にとっては憧れですが、大人になってからでも体の柔軟性は変えられるものなのでしょうか?
そもそも柔らかくなるものなのか、柔らかくなると実際どんなメリットがあるのか、気になる疑問をヨガインストラクターの堀江舞さんに教えてもらいました。
体の硬さは骨や関節ではなく筋肉のせい
――そもそもなのですが、体が硬い人と柔らかい人は一体何が違うのでしょう?
体が硬い人と柔らかい人の差は一言で言ってしまうと”筋肉の硬さの違い”にあります。
今こうやって自分の手で触れることができる体の外側の筋肉のことをアウターマッスル(表面筋)と言うのですが、実はこのアウターの硬さこそが体の硬さに関係しているんです。
例えばダウンジャケットを着てるときって腕や肘が動かしにくかったりすると思いますけど、まさにそれと同じような状態が体で起きてしまっているんですね。
――筋肉由来だとは知りませんでした。生まれつきの体質は関係ないんですか?
はい、そうなんです。体って赤ちゃんの頃はみんなふにゃふにゃに柔らかいもので、生まれつき硬い方ってほぼいないんですね。
成長にしたがって筋肉がついてくると体も硬くなっていく仕組みなので、特に部活や筋トレとかをやってらっしゃる方こそアウターが硬くなりやすい印象です。
外→内→外で体を柔らかく
――ではアウターマッスルをほぐしてあげれば柔らかくなるのでしょうか?
アウターをほぐせば柔らかくなる…というよりかは「アウターが硬いと肝心のインナーを鍛えることができないので、まずアウターから柔らかくする」という感じですね。
妨げになっているのはアウターの筋肉なので
- アウターを柔らかくしてから
- インナーを鍛えて
- 最後にアウターを鍛える
という順番でアプローチしてあげるのが一番良いのかなと思います。
家の外壁がいくらきれいでも柱がちゃんと立ってなければすぐ倒れてしまうのと同じで、骨周りについてるインナーからしっかり鍛えてあげてその上にアウターを付けていく~みたいなイメージです。
――この順番で取り組むだけで誰でも柔らかくなる?
はい、柔らかくなっていきますね。
例えば体操選手は筋肉バキバキでも体はしなやかですけど、これもインナーを整えてからアウターを鍛えてあげているからです。
鍛えていらっしゃる方もインナーさえしっかり動いていればOKでアウターがついていても体が硬くはならないんですよ。
でも、インナーがない状態でアウターを鍛えてしまうからその体型でバランスを保とうとして体もどんどん硬くなってきてしまうんですね。
その不調、体が硬いせいかも?意外と知らないメリット
――こう聞くと体が硬くて実は損していることも結構ありそうですね。
そうですね。特に女性の場合は体が柔らかい方が生理不順やPMSが改善されやすかったりしますし、他にも
- 偏頭痛
- 首・肩のこり
- 腰痛
- むくみ
- 低血圧・貧血
などなど、ヨガには本当にたくさんの恩恵があるんです。
女性は体調によってメンタルも左右されやすいですから、こういった体の不調が改善されてくると気分も前向きになってきますよ。
――痩せやすくなったりダイエット的な効果もあったり?
「柔らかくなると痩せるんですか?」という質問もよくいただくのですが、柔らかくなると痩せやすくなるは別物ですね。
例えば開脚できるようになるとお尻が真ん中から動かせるようになるのでヒップがより立体的になったり、内臓が下垂しなくなるのでウエストにもメリハリがついたり~とボディラインはすごく女性らしくなります。
むくみも改善しますし体脂肪も落ちるのでダイエット効果はあるんですけれども、体重が落ちるわけではないんですよね。ちょっとそこが難しいところかもしれません。
――アンチエイジングや女性らしい体作りという点ではメリットは大きそうですね。
そうですね。後は機能的に体を使えるようになってくると体全体のボディバランスがすごく改善されてくるので、そこもヨガの良いところかなと思っています。
みなさん目指す体は細かったりグラマーな感じだったり人それぞれ違うと思いますが、その人の骨格に合ったその人らしい肉づきになってくるという感じですね。
後は、どんな姿勢・体勢でも楽だったり落ちたものを取るにしても単純に効率的に体を動かせるようになるので省エネで疲れにくい体にもなっていきますよ。
硬い人でもできる簡単ヨガポーズ
それでは、ご自宅でも簡単にできる体を柔らかくするためのヨガポーズをいくつか紹介していきます。
体が硬い人からある程度動かせる人までレベルに合わせたメニューになっていますので、お好みの方に挑戦してみてください。
本当に体が硬い人向けのヨガポーズ
本当に体の硬い人は本格的なポーズが取りにくい方もいらっしゃるとは思いますので、まずは毎日負荷なくできる簡単なレベルからチャレンジしていきましょう。
ストレッチと違ってヨガは呼吸がとても大事なので、動きよりも呼吸の方をしっかり意識してみてください。
呼吸が深くなれば血液も手足の隅々まで行き渡って動きも良くなりますし、酸素や栄養素が届けられて肌のターンオーバーが良くなったり髪や爪がツヤやかになったり様々なメリットがあるんですよ。
ちょっと慣れてきた方向けのヨガポーズ
慣れてきた方や体が動かせる方は、ぜひこちらのもう少し本格的なポーズにもチャレンジしてみてください。
ヨガは頑張る必要がない
ヨガはストレッチと違ってよりライフスタイルに近い感じなので頑張るということがありません。
「ただそういう風に生きてるだけ」という感じで日常の一部になっていくので、頑張るのが苦手な方にはすごい向いてるのかなと思いますね。
続けていくうちにポーズを取ってる以外の時間も姿勢が良くなったり食べ物にも気を遣うようになったり…といったことも自然とできるようになっていくのでおすすめですよ。
ヨガを行うときの注意点
――実際ヨガを行うときに気を遣ったり気をつけた方が良いポイントはありますか?
脚を上げたり手を上げたりすると意外とぶつかってしまうことがあるので、安全のためマットの幅だけではなく手を上下左右に回しても当たらないくらいスペースは確保して欲しいですね。
後は普段あまり地べたに座ったりしない方はもしかしたら膝やお尻が痛くなってしまうかもしれないので、そういう場合は下にバスタオルとかを敷いてあげてもOKです。
それ以外はあまり気張らず、お飲み物なんかも用意していただきながらリラックスした状態で行っていただければ大丈夫です。
――ポーズの深さはどのくらいが良いものなのでしょうか?
ちょっとでも痛いと感じてしまうと筋肉は硬くなってしまうので、どこまで効かせるかは「1分キープできるところ」を目安にしてみてください。
終わったときに「ちょっと体動かしたなー」くらいの感覚がちょうど良いくらいと思います。
ガッツリやっても良いのですが、「1週間に1回30分間だけ激しく!」よりかは「1分でも2分でも毎日」の方が体の変化も効率的なので、早く柔らかくするためには毎日の継続が一番ですね。
服装のポイントやマットの有無
――マットは敷いた方が滑りにくそうですが、やはりあった方がいい?
難しいポーズになってくるとマットがないと危ないんですけど、上の動画の初級編くらいのヨガであれば最初はなくても大丈夫です。
「まだ初めたばっかり」「続けられるかわからない」といった方ならお好みで良いと思います。
――ウェアの方はどうでしょうか?
ウェアも一緒でヨガをするときはパジャマやジャージなど動きやすい服装であれば何でも大丈夫です。ただ、女性には「ウェア買った方が続けられるよ」というのは良く伝えていますね。
形から入るわけじゃないですが、その方が「ヨガやりたい!」っていうモチベーションも上がるのでおすすめですよ。
最後に…
私は小学生の頃からずっと慢性的な腰痛やむくみなど必ずどこかしらが痛くて悩んでいたのですが、体を柔らかくするために始めたヨガで体の不調が全部なくなって本当に驚いた経験があります。
それくらいヨガは万能で、不調を改善してくれるだけでなく怪我もしにくくなったりプロポーションも美しくなったり本当に良いことづくめです。
柔らかくしたい方はもちろん肩こりや偏頭痛、生理痛などなど体の不調に悩んでいる女性にはぜひヨガをおすすめしたいですね。